仮面夫婦だったはずですが妊娠したら、カタブツ社長は新妻への愛を抑えきれない。
◇妊娠発覚!?
「に、妊娠!?」
「ちょっ……茅那ちゃんっ大きな声で言わないでよ」
私は妊娠検査薬で陽性と出た日の翌日。
産婦人科を探し見つけたここより少し遠いクリニックへと行った。
『おめでとうございます、ご懐妊されていますね』
綺麗な女医さんにそう言われて、母子手帳を役場にもらいに行って『あぁ、私お母さんなんだ』と実感して。
「だ、だってさ……そんな上手くいってたなんて思ってなかったし」
「上手くいっているかは分からないけど」
「妊娠したってことは、行為したんでしょ? 愛し合ってるってことじゃない! 蓮司さん喜んだでしょ?」
茅那ちゃんのその一言が胸に刺さった。
「え、もしかして喜んでくれなかった?」
「……言って、なくて」
「えっ? はっ?」
「妊娠したこと、言ってない……食欲ないからゼリーしか食べてないし蓮司さんのこと避けちゃって」
茅那ちゃんは目を見開き、何も言わない。そりゃそうだ、普通妊娠したことは言うことだ。夫婦にとって、大切なことなんだから。
なのに、私は蓮司さんを避けて最近はほとんど会話をしていない。
「……あり得ない。なんで、言わないのよ」
「蓮司さん、迷惑かなとか喜んではくれないかもとか……」
「迷惑だったら、行為しないでしょ! ましてや、奥さんに」
「お見合い前、両親に言われたの……跡継ぎを産む為の結婚だからって。それを蓮司さんも同じ気持ちだって」