仮面夫婦だったはずですが妊娠したら、カタブツ社長は新妻への愛を抑えきれない。
だから私は蓮司さんに言うのが怖い。もしかしたら、彼はただ返事をするだけかもしれないと思ったから。
「咲良、いい? 蓮司さんは子どもを作る行為をしたの」
「一回だけで、妊娠するとは思ってなかったかもだよ?」
「一回でも十回でも一緒! 妊娠するときはするんだよ! それくらい蓮司さんだって分かってるよ!」
確かにそうだよね。私よりも年上なんだからきっと考えているよね。
「……でも、でもさ」
「まあ、蓮司さんに行ってみなよ。反応悪かったら、電話でもなんでも話聞くよ。私は実家だけど、来るのは大歓迎だから」
「うん、ありがと」
「いいんだよ。でも咲良がお母さんかー……ふふ、楽しみだね」
私はそれに頷くと「頑張る」と彼女に言った。頑張らなきゃ。だってもう私、お母さんだもんね……うだうだしててちゃダメだ。ちゃんと向き合わないと。その後彼女と別れて、マンションに戻って久しぶりにご飯を二人分作り蓮司さんの帰りを待った。