仮面夫婦だったはずですが妊娠したら、カタブツ社長は新妻への愛を抑えきれない。
「あの、蓮司さん。お願いがあるんですが」
「うん、何?」
「え、えっと……友人とお出掛けしたいんです」
勇気を出して言ったものの蓮司さんは少しだけ眉を寄せて、嫌な顔をした。だめだよね、社長夫人だし身勝手な行動しちゃ……。
「ご、ごめんなさい。今のは聞かなかったことに─︎─︎─︎」
「何故謝る? 謝らなくてもいい。久しぶりに羽を伸ばすのもしなくてはな……こちらこそ気がつかずすまなかった」
「いえっ! 蓮司さんが謝ることではないですっ」
「そうか。いつでも行ってこればいい。遠慮はするな……初めに言ったように君の自由を縛るつもりはないから」
蓮司さんのその言葉に、私はハッとし彼と出会ったお見合いの日のことを思い出した。