仮面夫婦だったはずですが妊娠したら、カタブツ社長は新妻への愛を抑えきれない。
「咲良ちゃんのご両親には報告したの?」
「いや、今から行く」
私の実家には午後行くことになっている。電話した時はあまり反応はなかったけど。
「そう! じゃあ、早く行かなくちゃいけないわね。きっとお喜びになるわね! 生まれてくるのが楽しみね!」
「あぁ……俺は咲良に似た可愛い女の子がいいな」
女の子?
私の両親は丈夫な跡取りを沢山産まないと、と何回も言っていた。
「女の子……で、いいんですか?」
「……? 咲良ちゃんは男の子がいいの?」
そう言われたら何も言えない。私は元気に生まれてきてくれるなら、どちらでもいい。
「咲良さん、“跡取り”のことは心配しないでいい」
「えっお義父さん……」
「別に血縁者が跡を継がなくていいと思っている。能力のあるものが上に立つ、そうでないと会社は一気に潰れるからね。蓮司はたまたまだ」
た、たまたまって……。