仮面夫婦だったはずですが妊娠したら、カタブツ社長は新妻への愛を抑えきれない。
《蓮司side》
「な、なんでですか!? 跡取り息子は必要でしょ?」
「いえ、血縁者が跡を継いで代々続いたら会社なくなるかもしれません」
お見合い時に咲良は両親に『丈夫な男児を』『それが稲葉に嫁ぐあなたの責務』だと言われていたと推測できる。
確かに代々続く鏑木家のようなとこはそうかもしれない。現に、咲良の兄である由都くんも長男として会社を継ぐことになっている。
「INABAは、祖父である稲葉健一が創業致しましたが私の父は祖父とは血縁者ではないただの平社員でした」
「えっ!」
父さんは本当に一般家庭で育ったただの平社員だった。だが、父さんは能力も皆を引っ張る力、判断力行動力があり昇進昇進を重ねていった。
「咲良が驚く必要ないだろ? さっき父さん言っていたはずだよ、能力がある者が上に立つべきだって。それに俺は本当にたまたまだっただけなんです」
俺がたまたまなら、父さんは運が良かっただけだ。稲葉の一人娘である母さんと恋人だったのもある。
「ですがっ……」
お義母さんもきっと、そう言われて育ってきたんだろう。女性はこうあるべきだとそう教育されてきたんだ。