仮面夫婦だったはずですが妊娠したら、カタブツ社長は新妻への愛を抑えきれない。
両親同席のもと、お見合いに行き蓮司さんと出会った。
『君は俺の妻としていてくれればいい。君の自由を縛るつもりはない。だから、俺を愛さなくていい』
期待なんて、していなかったつもりだった。いざ相手から言葉で聞いたらどうしようもなく、寂しくて辛かった。
けど、これは政略結婚。愛なんて関係なくて、実際両親も愛のない結婚だったと聞いていたし……断る理由もない。
「この結婚、お引き受け致します。稲葉さんの良き妻になります」
愛なんて期待しないと覚悟を決めた私は、はっきりと蓮司さんに言った。
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「ありがとうございます」
「楽しんでおいで……あ、ちょっとだけ待ってくれ」
蓮司さんはそう言うと立ち上がり自室へと行ってから何かを持って戻ってきた。
「……2人分、貰った。俺たちは行かないし、もし良ければその友達と行ってきなさい」
テーブルに2枚の招待券を蓮司さんは置いて「風呂に行ってくる」と私の顔を見ることなくリビングを出て行ってしまった。