溺愛王子は地味子ちゃんを甘く誘惑する。
「もう乃愛には近づくなよ」
「彼女を落とすには、俺には時間がありあまり過ぎるな」
俺の忠告も無視してそう言って、さらっと前髪をかきあげれば。
廊下を通過した女子生徒から「キャッ」と黄色い声が上がった。
大人の色気がこれでもかってほど出ている。
これじゃあ……女子が落ちるのも分かる。
てか、実習生がこんなちゃらちゃらしてていいのかよ。
「……っ。お前なんかに負けねーよ」
俺はパンの包み紙をくしゃくしゃに丸め、横にあったゴミ箱に乱暴に突っ込み、黒澤に背を向け歩き出した。