溺愛王子は地味子ちゃんを甘く誘惑する。
「あれ? 帰らないの?」
今日は部活がないはずなのに。
「帰っても暇だし、俺は体育館で自主練してこうと思ってんだ」
「あ、なるほど……」
すごいなあ。休みの日まで練習するなんて。
「がんばってね」
そう言うと、凪くんの瞳が大きく開かれた。頬と耳がほんのり赤くなる。
ん? 私なにかおかしなこと言ったかな?
自分の言葉を思い出しながら首をかしげる。
「さ、さんきゅ。じゃあ気をつけて帰れよ」
凪くんは、今度こそくるりと背を向けた。
私、凪くんに助けてもらってばっかりだなあ。
今度、なにかお礼が出来たらいいな。
そんなことを思いながら、去って行く背中が見えなくなるまで見送った。