溺愛王子は地味子ちゃんを甘く誘惑する。
廊下の真ん中で佇む私に声をかけてきたのは、萌花ちゃん。
声の方に顔を振ると、ちょうど階段の上から嶺亜と仲良く降りてきたところだった。
私は慌てて目たまった涙をぬぐった。
「凪とメシ食ってたんじゃないの?」
嶺亜も、私がひとりでいることを不思議がっている。
「う、うん……」
幸せそうに手をつないでいる二人。
それを見て、はっとする。
今日は萌花ちゃんのお誕生日。こんなことで心配かけちゃダメだよね。
「大丈夫だよ」
私はにこっと笑って、ふたりの前から走り去った。