溺愛王子は地味子ちゃんを甘く誘惑する。

えっ、なんで?


部活中の体育館に乃愛が来るなんて初めてだ。


「どうしたの?」


「えと……萌花ちゃんが嶺亜の練習を見に行くっていうからついて来たの」


「なるほどね」


俺を見に来たなんてあるわけないよな。


それでも、俺に声をかけてくれたのが嬉しくてたまらない。


乃愛と話すのは3日ぶり。でもそんなことを感じさせないくらいさらりと会話で来たことにほっとする。


だとしたら、倒れていて良かったのかも。


「すごい汗だね、大丈夫?」


「え? あ、ああこんなのよゆーよゆー」


まだ流れていた汗をタオルで雑に拭き、余裕をかます。


どうせならカッコいいとこを見せてやりたかったのに。黒澤のヤツ……!


「おう、藤森」


……ほらきた。


乃愛が来たからって近寄ってきやがって。
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