溺愛王子は地味子ちゃんを甘く誘惑する。
「嶺亜くんっ……!」
手にぎゅっと力が入るのが分かった。
桃組を応援することが申し訳なさそうに、小さく叫ぶ萌花ちゃん。
息をのんで、嶺亜を見つめている。
こんないい子が嶺亜の彼女で本当に良かった。
そして遅れること数秒、凪くんは3位でバトンを受け取った。
「いけー! 凪―――!」
みんな身を乗り出して大声合戦。
私もどさくさに紛れて声を出した。
「凪くんがんばってーーー!」
沢山の声にかき消されて届くわけないけど、気持ちだけは負けないように。
青いハチマキが風にたなびく。
手足の長さを見せつけるように蹴りだされるストライドは、息をのむほどかっこよかった。