溺愛王子は地味子ちゃんを甘く誘惑する。

リレーのあと凪くんは、先輩や色んな人たちに囲まれていてそのまま閉会式になっちゃったから、まだおめでとうを言えてなかったんだ。


改めて健闘を称えると、凪くんは一瞬周りに目をやって、


「ここじゃあれだからさ」


と、私の腕をつかみ、歩き出した。


「えっ、凪くんっ!?」


引っ張られるように連れていかれたのは、体育館裏。


賑やかなグラウンド側とはうって代わり、ここは人気が無くてガランとしていた。


「私、まだ係の仕事が残ってるんだけど……」


パイプ椅子はまだまだ残ってたし、テーブルも片付けなきゃいけない。


気になって、そっちをチラチラ見ていると、


「もう十分仕事してたじゃん。椅子一個ずつしか運んでないやつもいたのに、乃愛は両手で運んでたんだから、もういいって」


「み、見てたの?」


両手で運んだほうが効率がいいからそうしてただけで、特にみんながどうとかは気にしてなかった。
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