溺愛王子は地味子ちゃんを甘く誘惑する。

そのとき、ぶわっと風がふいて。


砂埃をまき散らすように、風が私たちの間を通過していった。


「あっ」


いたたたた。目にゴミが入っちゃった。


メガネを外して、タオルで目を抑えると。


ぱしっ……と、その手をつかまれた。


へ……?


「頑張ったごほうびちょーだい?」


可愛らしくそうねだった凪くんは。


反対の手で、私の頭に巻いてあったハチマキに触れた。


何をするのかと思ったら、ハチマキを目元にずらして。


「えっ」


真っ青なハチマキに視界を遮られる。


な、なにも見えなくなっちゃったよっ……。


──と。


唇に、柔らかい感触が伝わった。
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