溺愛王子は地味子ちゃんを甘く誘惑する。
施術は思ったより、時間がかかった。
でも待っている間に読める雑誌もオシャレだし、途中で出されたドリンクも、フルーティーでものすごく美味しかった。
途中でちょっぴり寝そうになっちゃったんだけどね。
「最後にカットして終わるからね」
担当さんはすごく真剣な目で、ハサミをシャキシャキ入れていった。
チャラいって思ってごめんなさい。薬液を塗るときも、ハサミを入れている今も、目は真剣そのものだったから。
きっと、このお仕事にすごく誇りをもっているんだろうなって伝わってきた。
「終わったよ、お疲れ様。どうかな?」
手鏡を渡されてびっくり。
誰……?って思うくらい鏡の中の私は変わっていた。
重くて日本人形みたいだった髪は、首を振ればサラサラと動いて、ほんのり茶色くなっている。
「す、すごい変わりましたね……」
私の驚きに、担当さんも満足そうに笑う。
「うん。思った以上にいいよ。毛先を巻いてあげると、さらに女の子らしさがアップするんだけど、巻いてみていい?」
「私、巻いたことないんですよね……」
女子力のなさを披露するようで恥ずかしかったけど正直に言うと、
「だったら教えてあげるよ」
不器用な私にもできるように、担当さんは丁寧に教えてくれた。