溺愛王子は地味子ちゃんを甘く誘惑する。
「えっ? どうしたのっ!?」
慌てだす萌花ちゃん。
そうだよね、こんなとこで急に泣いたらびっくりするし困るよね。
「ごめんっ……」
走って教室を飛び出すと、萌花ちゃんは追いかけてきた。
廊下のはしっこ。人気のない階段の前。
「どうしたの? 私に話してくれる?」
優しい萌花ちゃんの言葉に、私は素直にうなずいた。
「昨日から、凪くんがすごくそっけなくて……」
「えっ……」
「私なにかしたかな。きらわれちゃったのかな……」
声にしたらもっと悲しくなって。
目の前がぼやけたと思ったら、涙がぽろぽろっと零れてきた。