溺愛王子は地味子ちゃんを甘く誘惑する。
「もっと自覚してよ」
うっ。ダメだ。涙が出てきちゃう。
「……分かった。やっぱり私はこっちの方がお似合いだよね……」
私は、ポケットに忍ばせていたメガネを取り出した。
いつでも前の姿に戻れるように、メガネと髪ゴムは一応持っていたんだ。
「は? 何してんの」
「私なんて……なにをやっても可愛くなれないもんね……」
その場でコンタクトを外そうとすると。
「私なんて、とか言うなよ」
その手を止められた。
え?
全然話がかみ合わなくて混乱する。
自覚してって言ったのは凪くんでしょ?
そうすれば凪くんは満足するんでしょ?
「それ以上自分を卑下するようなこと言ったら、その口ふさぐよ? ……この間みたいに」
凪くんの目が、怪しげに細くなる。