溺愛王子は地味子ちゃんを甘く誘惑する。
この間みたいって。
あの、その。やっぱり体育祭のとき……。
ダメダメっ!
私は両手を重ねて自分の口の上に当てた。
だって、あんなことされたら……心臓持たないもん。
直立不動のまま、ずっと口を押さえていると。
「そうされてんのも地味に傷つくけどな」
「あっ……」
「あー、なんかムカつく」
そう言うと、腕をぎゅっと引っ張られ、凪くんの胸の中に閉じ込められた。
えっ? えっ?
ムカつくって言われてるのに、どうして抱きしめられてるの?
言葉と行動があってなくて、頭の中がこんがらがっちゃう。
凪くんの胸の中。真っ暗になる視界。
どくんどくん……凪くんの鼓動が聞こえる……。
「乃愛さ、自分がどんだけ可愛いか自覚しろよ」