溺愛王子は地味子ちゃんを甘く誘惑する。
「なにしてんの?」
「うわっ……!」
すると嶺亜だけが二階に上がってきて、そんな私を不審そうに眺める。
「……凪なら下だけど。呼んでくる?」
「い、いやっ、べつにそういうわけじゃないからっ……!」
私は慌てて自分の部屋に駆け込んだ。
もしかして、凪くんを待ってるとか思われた?
ばくばくばくばく……。
いまだに鼓動は暴れていて、深呼吸する。
壁に掛けてある鏡に映った自分の顔は、すでに真っ赤。
絶対、嶺亜にへんに思われたよね。
これから、家の中のいろんなところで凪くんに鉢合わせしたりするのかな。
お風呂や洗面所とか……。
考えただけでも、体が爆発しそうだよ。
両手を頬に当てる鏡の中の私は、しばらく赤い顔が収まらなかった。