溺愛王子は地味子ちゃんを甘く誘惑する。
「思い出した。あの子、中学の時に転校していった子だ。苗字は変わってるけど、
間違いないよ」
「え、マジで?」
「新城くんとつき合ってるってウワサがあった子だよ」
「あー、知ってるそのウワサ!」
そんな会話が聞こえてきて、私は思わず「えっ」と反応してしまった。
「それ、本当?」
先に声を上げたのは萌花ちゃん。その子たちの輪に頭を突っ込んだ。
普段はあまりしゃべらないけど、こういうときって一致団結感が芽生えるんだよね。
彼女は得意げになって教えてくれた。
「そう。新城くんが彼女を作らない理由でウワサされてる子だよ」
うそっ……。
あの子が例のウワサの子なの?
凪くんの、好きな人──。
目の前が真っ暗になった気がした。