溺愛王子は地味子ちゃんを甘く誘惑する。

もう一度呼んでみるが、変わらない。いよいよ不安になってくる。


「おい、大丈夫か?」


俺は焦ってドアをバンバン叩いた。


だめだ、変わらない。……こうなったら、


「開けるからな!」


──ガラッ。


目に飛び込んできたのは、バスタブに体を半分出した状態でぐったりしている乃愛。


「乃愛っ!? 大丈夫かっ!?」


慌てて風呂場に飛び込み顔を上にすると、乃愛は真っ赤な顔で意識を失っていた。


「誰かーーーーーっ!!!」


大声で叫ぶと、おばさんと嶺亜がすっ飛んできた。


「なにごとだよっ!」


同じく乃愛を見た二人は大慌てで乃愛を浴槽から出し、バスタオルで体を包む。


その間、俺は足の震えが止まらなかった。


なんで、こんなことに……。


「何があったんだよ」
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