溺愛王子は地味子ちゃんを甘く誘惑する。

授業間の休み時間、後ろのロッカーから英語の辞書を出していた時。


「藤森さんて、高校デビューなんだね」


ふいに、河村さんに話しかけられた。


「え?」


どうしてそんなことを……?


誰かから、ずっと地味な姿でいたことを聞いたのかと思ったんだけど。


「ほら」


河村さんが指をさしたのは、教室の後ろに貼られていたクラス写真だった。


クラス替えをしたばかりのころ、校庭の桜の木をバックに撮影したもの。


そこに映っている私は、当然地味なあの姿。
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