溺愛王子は地味子ちゃんを甘く誘惑する。

……凪くん。


そう言えば、朝くしゃみしてた。声も少しいつもと違った。


なのに、私は気づけなかった。


何もできず唇をかんで、教室を出て行こうとする二人を見ているだけ。


ずっと目で追っていると教室を出る寸前、河村さんが振り返って。


私に向かって小さくべーっと舌を出したのだ。


「……っ!?」


なに、今の!


完全に挑発されちゃったよ。




「乃愛ちゃーん……」


「悔しいよぉぉぉ」


さっきのことを萌花ちゃんに話して、項垂れる私。


それよりも、凪くん大丈夫かな。


どうしたんだろう。お布団ちゃんとかかってなかったのかな。


夏風邪って意外と厄介で長引くっていうし、心配だよ。


そこへ河村さんが保健室から戻ってきたと思ったら、凪くんのカバンに机の中のものを入れていく。


え?


「河村さんなにしてるの?」

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