溺愛王子は地味子ちゃんを甘く誘惑する。
「凪くんが……心配なの」
凪くんが帰った3時間目から、ずっと気が気じゃなかったんだ。
お母さんは仕事で家にいないから、凪くんはいま家にひとりぼっち。しかもそこは
人の家。
食べ物だって勝手に食べれないだろうし、薬の場所ってわからないはず。
萌花ちゃんは、そんな私にむかって大きくうなずく。
「わかった。先生には私から話しておくね!」
「萌花ちゃんありがとう」
そうと決まれば、すぐに帰りの支度をはじめた。
カバンに荷物を詰めて肩にかけ、萌花ちゃんに手を振って教室を出るまで1分もかからなかったと思う。
急ぎ足で廊下を進んでいると、
「あれ? 乃愛帰んの?」
廊下で嶺亜に会った。カバンを持っている私を不思議にそうに見る。
「うん、凪くんが具合悪くて早退したの。心配だから私も帰ろうと思って」
「マジで? やっぱ具合悪かったんだ。確かに朝からぼーっとしてんなとは思って
たんだ」
「家誰もいないし、心配でしょ?」
「それもそうだな。じゃあ、頼むよ」
そう言って、軽く手を挙げた。