溺愛王子は地味子ちゃんを甘く誘惑する。
おぼんを置いて、体温計をのぞき込んだ私はびっくりした。
「うつると困るから、近寄んない方がいいよ」
「そんなの気にしないで。それよりも、病院に行かなくて大丈夫?」
これだけ熱があったらつらいよね?
「へーきだって。いつも年に1回くらい熱出すし。お、すげーいい匂い」
少しつらそうにしながらも、壁に背中をつけて上半身だけ起こす。
でもやっぱりダルいのか、腕はだらんと下がっている。
「味はどうかわかんないけど……。食べたら薬持ってくるね。はい」
凪くんの口元へスプーンを運ぶと。
スプーンと私を見比べる凪くん。
「……食わせてくれんの?」
「……っ。あのっ、変な意味はないよっ、スプーン持つの大変でしょっ、だから……」
「……変な意味って?」
「へっ? あ、それは……」