溺愛王子は地味子ちゃんを甘く誘惑する。
「ここにいて……」
すごく弱々しい声。
具合が悪いせいか、瞳は少しうるんでいる。
……凪くん?
「……うん、わかった」
その手に私の手をそっと重ね、畳の上に座り直した。
「ありがと」
凪くんは少し微笑むと、安心したように目を閉じた。
具合が悪い時は心細いもんね。私も経験あるからわかる。
いつもの強引な凪くんじゃない姿は、ちょっと不思議な感じがするけど、
早く良くなります様に。
そう願いながら、優しく手を包んだ。
「……乃愛」
どのくらい時間が経ったんだろう。
名前を呼ばれてはっとした。
やだっ、寝ちゃった。
凪くんの手を握ったまま私は畳の上に横たわっていて、慌てて飛び起きた。
「凪くん、どうしたの?」