溺愛王子は地味子ちゃんを甘く誘惑する。

そう呼び掛けても、凪くんは瞳を閉じたままで。


あれ? いま、確かに私のこと呼んだよね? 


夢じゃなければ聞こえたんだけどなあ……。


「んー……のあー……」


まただ。やっぱり私の名前。


でも、目はつむったまま。


もしかして、寝言で私の名前を呼んだの……?


そうだとしたら、嬉しいような恥ずかしいような、胸の奥がくすぐったい気持ちになる。


穏やかな寝顔。


好きだなあと改めて思う。


カッコいいところも、強いところも、優しいところも、強引なところも。


いつも凪くんは、隠さずすべてを私に見せてくれる。


そして今日みたいに、こんな風に甘えてくれたり。


そんな寝顔を見ていたら、思わず口にしてしまった。


「凪くん……すきっ……」


好きが溢れすぎてどうしようもなくて。


初めて伝えたこの言葉。


凪くんに聞こえてるわけないのに、ものすごくドキドキした。
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