溺愛王子は地味子ちゃんを甘く誘惑する。
なんとか空気を壊さないようにその場では耐えて。
送別会という名の夕飯が終わると、私は自分の部屋に戻った。
クッションを抱えてベッドに座る。
「あーあ……」
はじめは1ヶ月なんて絶対無理だと思っていたけれど、過ぎればとっても楽しかった。
ドキドキの連続だったけど、だんだん凪くんとも距離を縮めていって……。
だからって、それだけだ。
好きってアピールすることも、自分のいいところだって見せられなかった。
はあ……。
せっかくのチャンス、私ってば何してたんだろう。
出来ることなら、凪くんがこの日に来た日からやり直したいよ。
明日から凪くんがこの家にいない。
そう考えただけで、なんだかものすごい喪失感に襲われる。
凪くんは今、荷物をまとめたりしているのかな。
手伝うふりして和室を覗いてみようかな……なんて思ってぶんぶん首を振ると。
ベッドに置いてあったスマホが鳴った。