溺愛王子は地味子ちゃんを甘く誘惑する。
岡本先生の授業中。
私の席は一番後ろなんだけど、ちょうど私の後ろに、黒澤先生が椅子を持ってきて座っていた。
なんだか後ろに居ると、見られてるようで落ち着かない。
「あっ……」
コロン……と消しゴムが床に転がってしまった。
落ちたのは、すぐ机のわき。
椅子を引いて立ち上がろうとすると。
黒いスーツの腕がすっと伸びてきた。
……え?
そして、机の上にのせられた。
黒澤先生が拾ってくれたみたい。
「ありがとうございます」
小さな声でお礼を言う。
「……どーも」
ニコリともせずにそれだけ言うと、黒澤先生はまた自分の椅子に戻った。
そっちまで転がったわけじゃないのに、わざわざ拾いに来てくれたんだ。
優しい人なのかな。ちょっとだけ、黒澤先生の印象が変わった。