溺愛王子は地味子ちゃんを甘く誘惑する。
気まずい放課後
その日のホームルームが終わったあとのことだった。
「おーい、藤森、ちょっと来てくれー」
岡本先生が手招きして私を呼んだ。
なんだろう。
帰ろうと、肩にかけようとしたかばんを置いて先生の所へ行けば。
「ちょっと手伝ってほしいことがあるんだ。時間あるか?」
「はい、大丈夫です」
部活もしていない私は、放課後は暇。
それを分かっている岡本先生に、こうして用事を頼まれることが今までにも何度かあった。
「岡本先生、人使いが粗いのは昔から変わってないんですね」
そう声を挟んだ黒澤先生は、ふっと笑う。
黒澤先生は今日も、昼休みなど女子生徒に囲まれていた。大変だろうに、爽やかな笑顔を振りまいて相手をしていた。
昨日見た面倒くさそうな顔は、もしかしたら見間違いだったんじゃないかなって思えてくる。
消しゴムも拾ってくれたし。