ひまわりの恋



 ――あれから十年が経った。



 俺は高校二年生に。


 俺は十年前のあの日から、あの女の子のことを忘れたことはなかった。

 特に八月.
 八月は他の月よりも、より強く、あの女の子のことを思い出す。

 そして、この時期になると、毎年のように、ひまわり畑に行った。
 そうすれば、あの女の子に会えるのではないかと思ったから。

 だけど、あの女の子には、十年前のあの日以来、一度だって会えることはなかった。



「今年は会えるだろうか……」


 俺は高校二年生になった今年も、ひまわり畑に数回行くことを決めている。

 そして、その中の一日が今日。


 俺は今、ひまわり畑へ向かっている。

 暑さで暖められた夏の風が全身を通り過ぎ、それと同時に夏の匂いを感じた。
 この感覚。
 これも十年前のあの日から全く変わっていない。


「着いた……」


 そして。
 ひまわり畑に着いた。


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