極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
さて。
いよいよ私たち軽音楽部の順番が来た。
まずは一年生と二年生。
最後に私たち三年生がパフォーマンスをする。
三年生は今回の夏フェスと夏休み中にある大会に参加して引退する。
その後は進路のことに集中する。
そろそろ準備が整い。
軽音楽部のパフォーマンスをするときが。
まずは一年生。
一年生にとって初めての夏フェス。
午前の部で一度、経験したから全く初めてではないけれど。
まだ緊張しているかもしれない。
でも、それ以上に思いきり楽しんでほしい。
次は二年生。
二年生は二度目の夏フェス。
他の行事でも何回か披露しているから。
だいぶ慣れているみたい。
リラックスしてパフォーマンスができているように見える。
そして。
いよいよ私たち三年生の順番が来た。
三年生にとっては高校生活最後の夏フェス。
思いきり楽しみたい。
……と、思いたいところだけど……。
私は純粋に午後の部のパフォーマンスをすることを。
楽しむことができないかもしれない。
というか。
できない確率の方が高い。
なぜなら。
今、私は。
とても緊張している。
とはいっても。
パフォーマンスをすることに対しての緊張ではない。
それなら何に緊張しているのかというと……。
いろいろな思いが駆け巡っている間に。
私たち三年生のパフォーマンスが始まろうとしている。
心の中は。
ざわざわしている。
けれど。
今は。
今することに集中、しなければ。
始まる――。
まずは序奏。
そこから流れを掴む。
ギター・ベース・キーボード・ドラム。
それらの音が合わさり一体感を生む。
その流れに乗るようにボーカルの私の声を重ね合わせる。
全ての音が。
開いている体育館の窓から流れてくる風と混ざり合わさって。
空間を気持ち良さそうにスーッと飛んでいる。
そこに。
観覧している生徒たちの歓声も加わり。
体育館内は。
夏の暑さにも負けないくらいの熱気に包まれた。
パフォーマンスが終わりに近づいても。
その熱気は衰えることはなく。
それどころか。
さらにヒートアップしていた。
パフォーマンスが終わっても。
その熱気は冷めることなく。
しばらく続いた。
やっぱり。
やっぱり楽しい。
パフォーマンスをしているとき。
最高に楽しかった。
わくわく、ドキドキ。
そんな感情が。
身体中から溢れ出てくる。
午後の部のパフォーマンス。
正直なところ、楽しむことはできないと思っていた。
このパフォーマンスのあとのことを考えると。
だけど。
歌っていたときだけは。
なんとか楽しむことができた。
それは。
みんなのおかげ。
バンドの仲間や盛り上げてくれた観覧している生徒たちの。
こうして。
無事に軽音楽部のパフォーマンスが幕を閉じた。
そして――。
「ちょっと、いいか」
ついに。
このときが来た―――。