極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です



 * * *


 芦達先生の部屋を出て。
 隼理くんの車で家まで送ってもらっているところ。


 私は車の窓から外を眺めていた。
 そのとき思っていた。

 結局、芦達先生や栗原さんの話に対して何も返答することができなかった。
 というより、どう返答していいのか、わからなかった。

 芦達先生や栗原さんの話したことに『いいよ』と言うのも少し違う気がした。
 だけど『許さない』も違う気がした。


 芦達先生は妹の栗原さんのことを大切に思うあまり、そういう考えになったのだと思う。

 栗原さんは隼理くんへの想いが強くて、そういう行動に出た。


 私が栗原さんと同じ立場になったとしたら。
 もしかしたら……栗原さんと同じ考え方になったかもしれない。
 だから栗原さんのことは責めることはできない。


 それに最終的には芦達先生も栗原さんも私と隼理くんに謝った。
 このまま知らない顔をしていても、バレる確率は低かったはずなのに。
 それなのに正直に私と隼理くんに謝った。
 その気持ちは受け止めようと思った。

 確かに謝れば何をしてもいいわけではない。
 けれど、やっぱり許さないという気持ちにはなれない。

 このことは許すとか許さないとか、そういうことだけではないと思った。



 ただ、一つだけ確かなことがある。

 それは。
 芦達先生と栗原さんが正直に打ち明けてくれたことによって。
 気持ちの整理がつき、より前へ進もうという気持ちになることができるということ。

 これから先。
 隼理くんと共に歩むとき。
 辛いことや苦しいことも必ずやってくる。
 それでも。
 隼理くんと一緒なら。
 それらを乗り越えようと努力をすることができる。


 そう強く思いながら。
 窓から見える景色を眺めていた。


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