極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
“ガチャッ”
そんな気持ちになっているとき。
鍵を開ける音がしてドアが開いた。
「ただいま」
隼理くんがスーパーから帰ってきた。
隼理くんの声は聞こえた。
けれど。
身体が思うように動かない。
ダイニングテーブルの前に突っ立ったまま。
焦りだけが募ってくる。
どうしよう。
まだ心の中が落ち着いていない。
でも。
平静を装わなくては。
美輝という女性のこと。
隼理くんとどういう関係なのか。
まだはっきりとわからないのに。
動揺したり落ち込んだりしたら。
隼理くんが不思議に思ってしまう。
隼理くんは勘が鋭いから。
私の態度を見ているうちに、私が隼理くんのスマホの画面を見てしまったことが、隼理くんにバレてしまうかもしれない。
だから。
「おかえり」
リビングのドアを開けた隼理くんに、できるだけ自然にそう言った。
そのときの私は。
ソファーに座っていた。
隼理くんがリビングのドアを開ける前。
思うように動かない身体を無理やり動かして。
なんとかソファーまでたどり着いて座った。
その直後、隼理くんがリビングのドアを開けた。
「ありがとう、隼理くん、買ってきてくれて。
あっ、さっき着信あったよ」
できるだけ。
できるだけ普通に。
今の気持ち。
ショックや不安や心配が。
声に混ざらないように。
それらの気持ちが、隼理くんに気付かれないように。