元ヤンキー男子はツンデレ女子を溺愛している
「…根岸くん。顔、近い」
私はヘッドホンを両手につけて、右側にいた根岸くんの方を向き、小さい声で言う。
「あ、ごめん」
根岸くんは私に言われて気づいたのか、目をキョロキョロさせた。
照れた様子で私を見ずに、違うCDを取って誤魔化していた。
「あのさ、今から伊勢宗介についてでもカフェで話さない?」
根岸くんはCDを手にして、黒目を私に向けて発した。
「いいけど。近くにカフェある?」
私は首を傾げてから、携帯を取り出して近くにあるカフェを探すと、すぐ側にあった。
「あるね。そこに。行ってみる?」
根岸くんも携帯を出して、調べ始めた。
「そうだね。行ってみよう」
私は根岸くんに返事をした。
「よし。じゃあ、行こう」
根岸くんは自分の鞄を握りしめて、私の肩をポンポンと撫でて、私の隣に来てまた笑っていた。
楽しい時に笑う。根岸くんはいい。
前よりも楽しそうにしている。
前はあまり笑わなかったけど。
私は返事をして、根岸くんを見る。
そして、新曲のCDを買ってから、目の前にあったカフェ屋に向かった。
「いらっしゃいませ。お二人様ですか?」
店員は私たちに礼をしてから、聞いてきた。
「はい。二人です」
根岸くんはそう言って、指を二つにしていた。
「では、こちらです」
店員は礼をしてから、私たちを案内した。