また逢う日まで、さよならは言わないで。
プロローグ
一人の青年の髪を風がいたずらに揺らす。
住んでいる町がよく見える丘の上に青年は立っていた。
「また、ここにいたのですか」
一人の執事が青年を呼びに来た。
どうやらもう、戻らなければいけない時間になってしまったらしい。
青年は、名残惜しそうに、今まで見ていた景色に背を向けた。
当たり前だと思っていたものが、当たり前ではなくなり、それでも人は歩む足を止めてはいけない。
そんな残酷な世界であるから、余計に過去の思い出は美しく、そしてしつこくまとわりつく。
それでも、彼女想い続ける青年は、彼女の思い出とともに歩んでいる。
今日も、そしてこれからも。
< 1 / 98 >