また逢う日まで、さよならは言わないで。
お姉ちゃんと、入れ違うようにして部屋に入ってきた直哉。
「見慣れないな」
直哉は、私の隣に座る。
いつもは、しても薄化粧の私が、今日は少々派手な化粧をしており、服装も、いつも着ないような、綺麗な服装をしているからだろうか。
「そうね」
お互いなぜか、目線を合わせず、会話をしてしまう。
「そんなスーツ持ってたんだ」
「花蓮さんが来るならスーツ買ってこいっていうから」
「お姉ちゃん、そんなこと言ってたんだ」
「そしたら、渉さんが一緒に選んでくれた」
「渉さん、優しいからね。お姉ちゃん、どうやってあんないい人見つけて捕まえたんだか」
「渉さんが、アプローチし続けてやっと付き合ったんだろ?あの二人」
「え、そうだったの?」
私が、直哉のほうを向くと、直哉も私のほうを向いていて、自然と目が合う私たち。
だけど、なんだか恥ずかしくなって、私はすぐさま目を直哉からそらしてしまう。
「し、しらなかった。てっきり、お姉ちゃんからだと思ってた。ほ、ほら、お姉ちゃんあんな性格だし……。そこら辺の男の人より、男勝りだし。……そんなことってあるんだね」
「……花蓮さんとお前、似たようなもんだけどな」
「え?」
「性格、なんとなく似てるじゃん」
「そう?」
「ああ」
「正反対とは言われたことないけど……」
「……もう時間だ」
時計を見れば、もう、式が始まる時間になっていた。
「あ、本当だ」
私たちは座っていた椅子から立ち上がる。
急いで、式場のほうへ向かおうとする私。
その瞬間、後ろから手を引かれた私。
「何?」
「やっと目が合った」
直哉が私の目をまっすぐと見てくる。
「な、なんなの!」
恥ずかしくなって、再び目をそらしかけた時だった。
「バック。忘れてる」
直哉は私の前に、椅子においてあったはずのバックを出す。
「あ、ありがとう」
「どういたしまして」
私が、直哉からバックを受けとる。
そのまま、直哉は部屋を出ようと歩き出す。
「ちょ、ちょっと待って」
私が足を止めると、直哉も足を止める。
「手!」
「手?」
私たちは手をつないだままだった。
直哉は私に言われて気付いたようだ。
だけど、直哉の表情は何も変わりやしない。
「あ、忘れてた」
そういって、直哉は私の手を放す。
私一人振り回されているみたいで、なんだかすごく悔しい。
いつもの格好が違うだけでこんなにも、調子が狂うとは私もまだまだだな。
私は自分に気合を入れなおす。
「早く行くぞ」
直哉はすでに部屋を出ようとしていた。
「わかってるよ」
私はそういって、直哉の背中を追いかけた。