また逢う日まで、さよならは言わないで。
その日の夜だった。
【結婚式どうだった?】
寝ようとしていた時に、ホクトからメッセージが来ていた。
私は、スマートフォンをもって、ベッドにもぐりこんだ。そして、ベッドに仰向けになり、スマートフォンを見やすいように持ち上げる。
【楽しかったよ】
【そっか。それはよかった。疲れただろうから、ゆっくり休んで】
【ありがとう】
私はそういって、ケータイの画面を落とそうとしたとき、再びホクトからメッセージが送られてきた。
【あ、そうそう。そういえば、あの立花副店長とはどうなった?付き合うことになったんだっけ?】
私は再びベッドに仰向けになり、ケータイを持ち上げた。
【あ、話してなかったっけ?立花さん、少し遠くの支店にヘルプ行くことになって、あのデートの日以来会えてないんだよね。でも、talkのメッセージで、ホクトは立花さんのことは知らないって言ってあるよ】
【そっか。それは少し残念だな】
【まあ、こればっかりはどうしようもないよ】
【そっか。またなんか悩みでもあったら、相談に乗るからいつでも言って】
相変わらずの、ホクトの優しいセリフに、心が温かくなるのを感じる。
私の口元の口角は自然と上がっていた。
いつもなら、ここで私のほうから途切れさせてしまうのだが、今日はなんだかまだホクトとメッセージのやり取りをしていたい気分だった。
【ありがとう。相変わらず優しいね。ホクトは好きな人とかいるの?】
今まで私が話すばかりで、ホクトに関して私はまだほとんど知らなかった。
【好きな人はいるよ】
返事はすぐに返ってきた。
予想外の返答に、少しびっくりした。
ホクトが好きな人がいながらも、私に連絡を取る理由がわからなかったから。
【え、私とメッセージやり合ってて平気なの?】
変なやり取りなどはしていないけれど、こうも日常的にホクトとやり取りしているとなると、ホクトにもし、彼女がいたら悪いと思った。
【平気。別に付き合ってるわけでもないから】
ホクトの返答に少し安堵する私。
それと、心の中でほんの一瞬嬉しがる自分がいることに驚いたが、自分のホクトへの独占欲がでてしまったのだろう。そう思った。
【そっか。うまくいくといいね】
それ以上なぜか私は聞けなかった。
【ありがとう。もう夜も遅いし、寝るね】
ホクトもそれ以上は何も返答はなく、私はようやくスマートフォンの画面を落とし、布団を首元までかけた。
しかし、暑くてすぐに布団を下げる。
いつもは、寝ようとすればすぐに寝ることができる私。
だけど、なぜか今日は目をつむっても、なかなか寝ることができなかった。
ホクトの好きな人って、どんな人なんだろう。
きっと、ホクトと付き合ったら、すごく紳士的に接してくれるのだろう。
ずっと、想い続けてくれるのだろう。
「……何考えてるの、私」
相手は、会ったこともない。ケータイでしか、つながることのできない人。
それなのに、目をつむれば考えてしまう。
どんどん、ホクトへの疑問が波のように出てきてしまう。
私はベッドから起き上がり、ベッドサイドの電気をつけた。
夜風にもあたろう。
そう思って、ベランダへ出た。