また逢う日まで、さよならは言わないで。
朝の二度寝ほど気持ちのいい眠りはないと思う。
だから、この遅刻も悪意があって、やったことではない、ということだけはどうか、理解してほしい。
「ごめんっ!」
「……」
「怒ってる?」
「それなりに」
待ち合わせに到着した今の時刻は11時。
私の起床時間は10時半。
私が昨日直哉に言った集合時間は10時。
直哉は1時間、私の家の玄関の前で待っていた。
いつもなら私の家に入ってきて、私のことを叩き起こしそうなのに。
私は直哉の顔を覗き込んだ。
「なんだよ」
「お昼おごるから、ね?」
どうにかして、直哉の機嫌を取りに行こうとする私。
「その言葉、忘れるなよ」
「わかったよ」
直哉は、やっと、顔を上げ、私のほうを見た。
そして、またすぐにそらしてしまう。
「……どうしたの?顔に何かついてた?」
「……別に」
直哉は、私よりも先に歩き出す。
おいて行かれまいと、私は直哉のその大きな背中を追いかけた。