また逢う日まで、さよならは言わないで。
電車から降りた瞬間感じるのは、土と草のにおい。
日はもう沈んでいた。
夜の冷えた空気が私たちを包む。
私は肺いっぱいにそんな空気を吸い込んだ。
私たちの降りた駅には、ほとんど人は下りない。
なぜなら、ここにはほとんど民家がないほどの田舎なのだから。
こんな、田舎の駅で降りた理由は1つだ。
「さて、行きますか」
「ああ」
私が先に歩き出す。
その横を、直哉があるく。
この町の街灯は少なく、車通りもほとんどない。
聞こえるのは、虫の声と、風の音と、たまにくる電車の走る音。
道は狭く、車一台通れるくらいの広さだ。
一応コンクリートで舗装はされているが、でこぼこで、ところどころコンクリートは割れている。
油断すれば転んでしまう。
夜風にあたりながら、私たちはゆっくり歩いた。