また逢う日まで、さよならは言わないで。



――――あの時からここの景色はずっと変わらない。私がここに初めて訪れたあの日から。



「……また家出したのか?」



電車に乗って、下車したはいいものの、行く当てもなく、真っ暗すぎるこの場所が怖くて、駅から動けずに泣いていた私。



背後から、聞き覚えのある声に私は安堵したのを今でも覚えている。



「なんでここに?」


「家出ていくの見えたから」


「……直哉ぁー」



そう言って、私は直哉に抱き着いて泣いた。



中学生だった私たち。


こんな夜中に他の人に見つかってしまっては補導されるに違いない。


すぐにでも直哉は私を家に帰したかっただろう。


しかし、直哉は私が泣き止むまで、あの時は黙って胸をかしてくれたんだっけ。



すぐに家には帰りたくないと、わがままを重ねた私。


直哉はその時文句ひとつ言わず、私の手を引いて、駅を出た。


真っすぐ暗闇をかき分けるようにして進んでいく直哉。



さっきまであった恐怖心はもうなかった。


感じたのは、直哉の手の暖かさと、梅雨独特の湿った夜の空気だけだった。



その時に出会った景色がここだった。



それから毎年私たちは、この時期にこの場所に来るようになったんだっけ――――。




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