また逢う日まで、さよならは言わないで。
冬
誰かが言っていた。
「好き」になった理由なんてあやふやなもので、だけど「好き」なことは確実で。
それはまるで季節のようだと。
「雪……」
隣で彼はそういって、振ってくる雪を手のひらに乗せた。
彼の手の温度でそれは一瞬にして水へと変わる。
「直哉って雪みたいだよね」
口が勝手にそう動いた。
考える前に、口に出してしまっていた。
「え?」
直哉は、少し首を傾げる。
「雪はさ、故郷の空からやっとの思いで降ってくる……けど。いざ地上に降り立ってしまうと、いつかきえてしまう運命を悟る。この世界が本当の彼らの世界じゃないから。春が来るから」
言ってから気付いた。
これは、直哉に「帰らないで」と言っていることと変わらないということに。
だけど、彼は笑ったんだ。
「……俺らは雪か。來花にしては上出来なたとえだな」
いつもみたいに、私のことを馬鹿にしてくる。