誘惑じょうずな先輩。


もう、それじゃ……わたしが覗き魔みたいな言い方。


……あながち間違いじゃないから、反論すらできなかった。



夏川くんはぶれない表情で、片眉をあげて言う。


「そんなにバンリ先輩が気になんの?」



からかう感じが、なくて。

本気で聞いてるんだってわかって。



……そんなの、自分でもわからないよ。



答えの出せない気持ちを誤魔化したくて、
夏川くんに言葉を投げた。




「……わたし、教室もどるから、」



急にしおらしくなったわたしに、「は」とひとこと呟いた夏川くんだったけど、歩き出そうとしたわたしの腕を慌てて掴んで引き止めた。



「え……、な、なに?」



そんなに力は強くなかったけど、夏川くんに触れられるとは予想外で過剰にびっくりしてしまう。


引き止める……理由、なに?




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