誘惑じょうずな先輩。
それでも、胡子ちゃんの告白に戸惑い、
言葉を失ってしまう。
「ゆんは知らないかな。
この学校にはさ、その世界ではとんでもなく強くて有名なひとが在籍してるの」
「う、うん……?」
その世界……って、
夏川くんが夜の街にいるようなときの、
世界?
「神田……っていうんだけど、わたし、
その人が好きなの」
……カンダ。
神田くん、そんなの、ひとりしか思い当たらない。
保健室に、やってきて。
猫に引っ掻かれた、あの人。
夏川くんの、お友だち。
「神田白亜くん……?」
「……えっ、ゆん知ってるの?!」
わたしが思わずフルネームを漏らすと、しっかり耳に届いたみたいで、とても驚かれた。
……神田くんって、やっぱり悪い人だったんだ。