誘惑じょうずな先輩。
「そのとき見ちゃったんだけどね、野良猫と猫じゃらしで遊んでて。
見るからにやばいオーラ出してんのになんてかわいいことしてるんだ!ってなって……、もう一目惚れ」
はにかむように笑った胡子ちゃん。
それだけで華が咲いたような明るい雰囲気になって、わたしもなんだか嬉しくなった。
それに、神田くん……。
ほんとに猫が好きなんだな。
手当に来たときも、猫に引っ掻かれたみたいだったし……。
胡子ちゃんは強いひとのそういうギャップに弱かったみたい。
「神田くんとどうこうなりたい、なんてそんな贅沢なことは言わないけど……。
卒業までに、一回は話してみたいな、」
胡子ちゃんはそう言って遠くをみて。
はあ、とため息ひとつ。
胡子ちゃんの恋を応援したい。
けど……、神田くんが危ない人ならば簡単に応援できるわけでもないんだな……。