誘惑じょうずな先輩。


びっくりして目をむく。


どうやら、夏川くんはわたしと先輩がくっつくように仕向けてくれていたらしい。


あのキス未遂も、まさか本当にするつもりなど1ミリもなくて、先輩が来るだろうと思って思い切って行動に移していたんだとか……。


そんな素振りなんてなかったものだから、聞いて、いますごく驚いている。


いや、まさか夏川くんがわたしに好意を持っている、とかそういうのはまったく考えてなかったけど……。


そういう考えをもって行動していたとは、知りもしなかった。



唖然と夏川くんを見たら、彼は当然のように頷いて「あたりまえだろ」と言う。



「わざわざ先輩に喧嘩までふっかけてやったのに、くっついてないとかふざけんなよ」


「ご、ごめ……っ」



「いや、予想はついてたからいいけど」



……どうやら、夏川くんはわたしたちになにか呆れてしまっている。


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