誘惑じょうずな先輩。
軽く言う夏川くんに同じように軽く返したら、にっと笑われた。
それだけで、ちょっと心が安らいだ。
すると彼は、思い出したように口を開く。
「あ、でさ。
毎年恒例のあれ、出ればいいじゃん」
「あれ……?」
抽象的すぎてピンとこなくて、首を傾げる。
理解力のないわたしに、夏川くんは仕方なさそうにネタばらしをしてくれる。
「そ。告白大会」
「……こくは……っぇぇええ、ムリムリ!!」
なんでそうなるの?!
びっくりしすぎて目が飛び出るかと思った。
慌てて顔の前でぶんぶん手を横に振ると、
夏川くんはおもしろそうに、にやにやしている。
「心の殻を破ってやんよ」
「……ちょ、わたしには難し……いかな」
夏川くんが言っているのは、文化祭の最後に行われる学園の一大イベント、告白大会。