誘惑じょうずな先輩。


全校生徒の前。

しかもすっごく盛り上がっているなかで、
万里先輩に告白……?



……いや、怖い。

想像しただけで震えてしまう。




「ま、香田さんがそんなことしたら、アガって死んじゃいそーかも」



ククって失礼な笑みを浮かべる夏川くん。

……それって、ディスってる?



でも、夏川くんってほんと嫌味なくらい正論しか言わない。


反論させてくれない。

タチ悪いんだから。



じとーって湿気のある視線を送ってあげると、彼は苦笑した。



「自分のできる範囲で、先輩に想いを伝えられれば、結果オーライだから」


「うん……、そう、だね」



わたしが先輩に好きって伝える日が、いつか来るんだろうか。


そのまえに、先輩とまた話せるときがいつ来るんだろう。


待てないな。


それに、わたしが距離を置いているあいだ、先輩はほかの女の人とお話できるわけで。


……そんなの、ズルい。


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