誘惑じょうずな先輩。
わたしの言葉に、彼は「はあ?」と呟く。
「俺、別にそういう趣味ねえけど」
「あ……っ、そういうことじゃ、なくて」
か、勘違い。
夏川くん、わたしが尋ねたことを取り違えてる。
こっちは学園祭でコスプレするの、って聞いたつもりが、彼は普段からコスプレするの、って意味と捉えたらしい。
ちょっとフキゲンなのは、気のせいではなさそう。
「学園祭で、なに着るの、かなって……」
まだ決まったわけではないけれど、クラスの盛り上がりようでだいたい出し物としてはそれしかないと思うから。
決まった前提で話す。
すると、夏川くんは首をひねって「うーん」と唸った。
「香田さんが決めてよ」
…………え、なんで?
パチパチと目を瞬かせると、おもしろそうに夏川くんは笑った。