誘惑じょうずな先輩。
「はーい、じゃあ『コスプレ写真館』に決定ねー」
わたしたちが小声で話していたあいだに、
やっぱりそれに決まったみたい。
マリちゃんの声に、教室中から拍手が起こる。
ちらっと夏川くんをみると、さっきまでの笑いはやっとおさまったのか、いつもどおりだった。
「それじゃ、明日までに自分がなに着たいか決めてきてくださーい」
はーい、と元気なクラスメイトの声を聞きながら、ふと考える。
万里先輩は……、先輩のクラスはなにをするんだろう。
もし、もし、女の子が集まる出し物だったらどうしよう……。
たとえば、執事に扮したり、ほかにもかっこよさをアピールするものになってたりしたら。
どうしよう、そんなのイヤだ。
わたし、彼女でもないのにわがままだ。
でも、イヤと思うのは本心だからどうしようもない。