誘惑じょうずな先輩。
あれ以上、モテちゃったら困るよ先輩。
しかも、学園祭だから他校からもたくさんの女の子来るんだよ。
連絡先とか……、聞かれるよきっと。
その光景がカンタンに目に浮かぶ。
ぶるりと寒気。
……だめ、先輩は、だめ。
わたしでさえも……、連絡先とか、知らないんだから。
どうしても自分基準。
そこは恋する人として許してもらいたい。
「学園祭とか面倒だわー」
となりで雰囲気を台無しにするようなひとことを言っている夏川くんを無視して、
はあ、とため息をついた。
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次の日の昼休み。
「あっ、怪我しちゃったんですけど……、
手当してもらえますか?」
めったに来ない、平和な保健室に訪問者がひとり。
名札をみると、どうやら後輩、1年生らしい。
中庭で走り回ってでもいたのか、頬を上気させて言う後輩くんに、微笑んで「大丈夫だよ」と頷く。